桜日和
約束は月曜日。
珪くんから 「森林公園に行かないか?」 って誘ってもらっちゃて、即OKしたのに……。
今日は日曜日。
窓の外は、どーして雨なのよぉ!!
せっかくの桜も散っちゃうよー。
桜を見るのに、天気予報も調べずに誘ってくれるてっのも珪くんらしいか。なんて思ったらちょっと笑えた。
珪くんも残念とか思ってくれてたら嬉しいなぁ。
−−そうだ!
いいコト思いついちゃったかも……。
**
雨が降っていた。
今日、あいつと約束、したのに。
今まで、あいつ、天気予報見てから誘ってきてたのか?
前に桜を見たの、咲き初めで。……
……これじゃ、せっかくの桜、今日で終わるな。
…………、去年は何の意識もしてなかったのに。俺、ヘンだ……。
アイツと、桜見れなくて、すごく残念だと思ってる。
***
『ピンポーン』
ためらいがちなチャイムが葉月の家の中に響いた。
桜を取りやめにして、他の場所に行くことを伝えようかと、携帯電話を握っていた彼は、そのチャイムすら疎ましく思った。
しかし、出ない訳にはいかない。家の留守を頼むと両親に頼まれた手前があるからだ。
いつもどおり彼は、インターフォンに出ることなく、直接ドアを開けた。
彼の目に飛び込んできたのは、晴れてるかと思うような彼女の笑顔だった。
「…………、どうして?」
「桜、見に行くんでしょ? ちょっと雨だけど。迎えに来ちゃったよ」
雨は霧雨程度だったが、満開の桜を散り急がせることには変わりない。
それでも彼はうれしかった。隣に彼女がいることが。彼女が自分と同じ思いであろうことが。
桜は美しく幻想的だった。
桜並木の奥の方は霞がかり、手前にくれば来るほど桜の色が濃くなっている。
曇り空も合い交え、雨で桜の幹は黒く染まり、まるで水墨画の世界の中にいるかのようだった。
それはいたく彼の心を打った。
この世にこんな美しい景色もあるのだと。
「雨の日も、きれいだね」
しんと静まり返った空間が、彼女の声を引き立てるかのようだった。
「……ああ。やっぱりいいな。桜も……おまえも……」
彼はあっと思い、彼女を振り返った。
いつもは鈍感な彼女でも、そんなことを言ったら気付かれてしまう気がしたからだ。彼自身の気持ちに。
一瞬、彼女の頬は桜よりも濃く染まった。
「……け、珪くんと見たかったんだ、桜……」
それは、彼女にしては早口で、少し聞き取りにくかった。
「……今なんていった?」
「言わないよ。桜と一緒。同じ景色はないの」
あはは、と笑い彼女は、駆け足で彼を追い越していく。
ずっとこの空間が、この世界から切り出されたまま良いのに。
彼と彼女は、霧雨と、花びらが降り注ぐ空を仰いでそう思った。
+++++++++++++++++++++
ラブラブにはほど遠いなぁ。。。
と、最初に珪くん狙いで有沢さんとエンディングを迎えた私が書きましたよっと。(デジャヴかとオモタ)
* モドル *