「………………」 歯ブラシ……。 約束の時間まで、2時間……。シャワー、浴びよう。汗臭いのもなんだし……。 でも、どういつもりなんだ? 泊まってくれって言ってるようなもんだし、あれ。 ……そう言う仲になったわけでもないし。 それは、こっちがそう望んでるだけだ。 いや。、そう思ってるのかも。 あんなに頻繁に、休みの日に遊ばないよな、普通……。 考えれば考えるほど、、わからないヤツだ。 やっぱりここは……。 ……いつもより、丁寧に洗っとくか? ここ……。 ―― そういえば、 、『うんとご馳走作っとくねっ』っていってたな。 ご馳走……。二人きりで……。 「私がご馳走」 とか言ったら、引くな……。そんなわけないか。 あ……。でも、なんか……。 ヤバくなってきたかも。 ……大丈夫か? 俺。 サマさなきゃな。……これ。 ケータイは……、まあいいか。ほとんど持ち歩かないし、俺。 財布と、歯ブラシと……。 ……男のエチケットだからな、一応。これも持っていくか。 使用期限は……大丈夫だな。 あの人に貰ったときは、別にありがたくもなかったけど。感謝するな、こういう時。 ………………。 「……なに考えてるんだ? 俺……」 * は、笑顔で俺を出迎えてくれた。 弱いんだよな、こいつのそういう顔に。俺。 作ったくれた 『ご馳走』 は、和食だった。筑前煮、牛肉の香草焼き、白和え、あさりご飯、お吸い物だった。 「……ふうん。やるじゃん、おまえ」 「えへへ。珪くんモデルやってるんだし、あんまりカロリー高いもの、出すのもな〜って思って」 優しい気遣い……。照れた笑いも、いいな……やっぱり。 二人で、食器洗って 「珪くんは、結婚してもこうやって、一緒に家事してくれるんだろうね」 が、何気なく言ったその言葉、なんとなくドキッとさせた。 「いいな、珪くんの奥さんになる人って」 ……やっぱり鈍いんだろうな。……こいつ。 「珪くん、お風呂入る?」 「……あ、俺」 「遠慮しないで。さ、さ」 は、背中を押して、風呂へ行かせる。 もう、入ってきたんだ。 言おうとして、を振り返る。 そこに、きょとんとした顔の、がいる。 「あ……。一緒に入るか?」 言えなくて、言ってしまった。……なに言ってんだ? 俺。 は、顔をものすごく赤くした。 「……冗談だ」 「…………もう」 風呂から上がるとは、パジャマに着替えていた。パジャマ姿は、いつもと違って見える。なんか……。 ん?パジャマってことは……? 「おまえ、風呂は?」 「帰って来てすぐに入ったの。どうしても珪くんと見たい映画、テレビでやるの」 ……そうか……。 「……映画、なにやるんだ?」 俺と見たい映画、なんだ? ハリー・ポッター? それともスターウォーズか? 「うん。……リング」 ……映画、ちょと怖かったかもな。でも、真剣に観てる見てたら、可笑しかった。……もしかしたら、映画なんてほとんど見てないかも、俺。 「……じゃぁ、そろそろ帰る、俺」 「えええ!! 帰っちゃうのぉ?」 なんて顔で、なんて事言ってるんだ? そんな甘えた顔するな。……帰れなくなる。 「ああ。そうそう、テレビ、気を付けろよ。サダコ、出てくるかもな……冗談」 「いやあぁ。お願いぃ。一人にしないでよぉ」 「あんな映画観る方が……。泣くな。……どうしていいか、わからなくなる」 「……じゃぁ、泊まってって」 ……………………。 「ごめんね。尽の部屋、鍵掛かってて……。おとーさんとおかーさんの部屋も鍵掛かってるみたいなの。お布団、おかーさんの部屋の押入れにあるし」 「一階のソファーでも……」 「だめ! サダコが来たらどーすんの?」 「……ばか。あれはフィクションだろ?」 「……私が怖いの……。だから……」 ……だから? 「一緒のお布団で寝よ?」 「……あ? お、お前、大丈夫か?」 「だいじょーぶ。私、ねぞう、そんなに悪くないから。……シングルベッドで、ちょっと狭くて悪いんだけど、いいよね?」 良いか悪いかって聞かれたら、良いって答えるだろう? 普通の男だったら。 こいつ、俺をなんだと思ってるんだ? 「わー。これで怖くなくなった」 そんなホッとした顔するな……。 ちょっとムカツク……。 暗闇にの声だけが聞こえる。最初は囁くような感じだったが、今ではハッキリと聞こえる。そんなにも……深い。 「……ぁあ。……―んぁ」 その度に、俺は身震いにも似た感覚に襲われる。 「―…はぁん! 珪……く・ぅん」 シングルベッドが、ギシリギシリと鳴く。 俺の溜息が漏れる。 「だ……め。ぁ……もう。」 ……だめになるかもしれない、俺も。 「イッちゃ……やぁあん」 掛け布団が乱暴にはだけ、二人が暗闇に露わになる。 俺に腕を絡ませ……。 「サダコが〜!」 寝始めは、ドキドキしてた。手が、の肌に触れそうで……。髪が肩に触れるだけで……。 寝言も、寝返りも可愛いと思った。……抱きしめたいほどに……。 寝言……。ドキッとした。聞く度に反応してしまう俺の本能。理性がそれを必死で制しても、本能は正直で、健全だ。 ――眠れない。 いや、たとえ寝たところで、どうするんだ? 朝の生理現象? だからと言って、ここから離れようとか……思えない。 「ハァ……」 |